日暮れ時から激しい夕立に見舞われた9月7日(金)。京都市街の三条高倉に位置する京都文化博物館のフィルムシアターにて、映画24区KYOTO俳優ワークショップ講師・谷口正晃監督セレクトによる名作映画の上映と、監督トークが行われました。
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「スクリーニング・セッション ~谷口正晃監督特集 vol.2」と題されたこの催しは、京都みなみ会館で谷口監督のメジャーデビュー作『時をかける少女』を上映した「vol.1」につづく上映企画第2弾。
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このごろ日本各地で起こっているような局地的な集中豪雨に見まわれながらも、約50名ほどのお客さんがご来場。日本映画史に残る名画の上映と谷口監督のお話を堪能していただきました。
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せっかく京都で映画人発掘育成プロジェクトをやるからには、京都が持つ豊かな映画的土壌を改めて発信したい。京都で生まれ育った谷口監督の映画に対する考えや取り組みを紹介したい。そんないくつかの思いから企画されたイベント。今回も当日の様子をレポートにまとめてみました。
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その日の京都文化博物館(以下、文博)フィルムシアターは、「追悼 山田五十鈴 特集上映」の真っただ中。お昼には伊藤大輔監督の『大江戸五人男』が上映されており、京都在住の映画ファンで賑わっていました。会場入りした谷口監督も上映案内チラシや展示物に関心を寄せて見入ります。
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文博所蔵の映画フィルムは3000巻800作品。日本を代表する数多の名画の中から今回谷口監督が選び出したのは、山中貞雄監督の『人情紙風船』(1937)。江戸時代の長屋を舞台にした人情劇の傑作であり、京都が生んだ稀代の天才、山中監督の遺作でもあります。
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75年前の作品ながら、今観てもその魅力は色褪せません。むしろ深い余韻を残す演技と演出は、現在の日本映画の在り様と比べても際立って見えます。同時に、日本が軍国主義に傾倒し、戦争へ突き進んでいく時代の重い空気が反映されているような箇所もあり、本作の封切当日に山中監督に赤紙が届いたという史実と併せて、重く心に突き刺さるものがあります。まさに不朽の名作と呼ぶに相応しい86分でした。
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上映後、谷口監督トーク。テーマは「山中貞雄について」。
さすがの谷口監督も、同じ映画監督として巨匠中の巨匠を語ることのプレッシャーからか、かなり緊張のご様子。
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まずは『人情紙風船』を選んだ経緯。京都出身の映画監督ということ、この日の10日後が中国の戦地で亡くなった山中監督の命日(9月17日)ということもあり、山中作品に絞られたのだそうです。「今回のために猛勉強した」とおっしゃった通り、資料を提示しながらの解説は、ワークショップでの演技指導と同じく谷口監督らしい真摯なもの。『人情紙風船』撮影期間中、天候に悩まされたようだというエピソードを紹介されるあたり、撮影現場での監督の在り様に思いを馳せていたのかもしれません。天才でありながらも職人気質、先輩監督達から可愛がられ続けた人柄・・・現役監督としての谷口監督ならではの視点を交えつつ、映画作家・山中貞雄の人物像を浮き彫りにしていきました。
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途中、文博の映画アーカイヴ担当学芸員、森脇さんも山中貞雄ゆかりのエピソードを披露。出兵先の中国で亡くなった山中監督と同じ隊に居たという方が文博に来られたことがあったそうで、亡くなった時の状況を語ってくださったとか。その方によると、山中監督は、瀕死の状態から一度は快癒したのだそうです。ところが、戦地でも著名な映画監督としてつとに知られていた山中監督が回復したということで、快気祝いで上官から豪勢な中華料理を振舞われたものの、それが身体にたたってパタッと亡くなられたのだ、と。知られざる歴史の裏側に、会場は息をのみました。
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トークの最後には、清水宏監督の言葉を引用しながら「はったりがなく、人間を美化せず卑下もせず、ありのまま謙虚に描いたのが山中貞雄監督でした」と締められました。それはまた、谷口監督が目指す理想の映画作家の像でもあるのではないでしょうか。
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続いて、谷口監督が学生時代、卒業制作として撮られた短編『洋子の引越し』(1989)の上映。「ぴあフィルムフェスティバル 最優秀16mm賞」を獲得し高い評価を得た本作は、映画監督・谷口正晃の原点。ですが、『人情紙風船』の後に上映されることに、谷口監督は恐縮しきり。ワークショップでの毅然とした態度とは違う、一映画ファンとしての面が垣間見え、スタッフには新鮮でした(笑)。
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引っ越しのトラックに乗り込んだ三人の男女。東京湾岸地帯を舞台に、その微妙な関係をスタイリッシュに描いた作風は、『時をかける少女』(2010)などで知られる現在の谷口監督からは意外に思えるもの。
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寂寥感溢れるモノクロの画面と、出演者の静かな演技。淡々と時間が流れる中、ほとんど唯一のアクションとして、ボールと戯れる主人公の無邪気な姿が描かれ、三人の男女の心の機微を丁寧に表現する手法と相俟って、見事に若者の焦燥や不安を切り取った秀作であるように感じました。
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会場の評判も上々。しかし、監督には若かりし頃の自作が照れ臭かったようで、上映後のトークでは反省の弁ばかり口にされます。
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そういえば、『洋子の引越し』は、『人情紙風船』と同じく京都出身の映画監督が東京で撮った映画でもありました。時代劇と現代劇の違いはあれど、半世紀を経て映画史が繋がるような不思議な共通点を感じます。
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その後の質疑応答。今回上映された二作品について、会場のお客さんと監督の間で活発なやりとりが交わされました。驚くことに、『洋子の引越し』制作当時、まさに撮影された湾岸地帯で働いていたというお客さんも登場!最後まで、映画の持つ「縁」の力について考えさせられました。
遠く離れた時間や場所や人間を繋ぐ力・・・。映画にはそれがあると思います。映画24区KYOTOはその活動を通して、京都で映画を志す人々を育てるとともに、出会いを紡いでいくための場所を作り上げていきます。
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というわけで、第2回俳優ワークショップのイベントレポートにつづきます。こうご期待!
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谷口監督のレクチャー企画、次回も企画したいですね! |
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