くっつくことで互いを縛りつけあいたくない
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いよいよ10月14日後半クラス開始!!
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・・・の前に、こぼれ話。
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前半クラスの終了時間が30分も押したため、谷口監督の休憩時間が削られることになってしまいました。しかし監督は控室でお弁当をかきこんだだけで、すぐに会場に戻られました。数々の映画の現場で鍛えられたタフネスにスタッフは驚愕!
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さて、後半クラスも昨日の実技映像を鑑賞するところから始まります。自分の演技、他人の演技を観ての意見交換が活発に行われていく会場。そんな中、監督があることを思い出しました。
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「そういえば、昨日、飲み屋で面白いことを言っていた人がいたね 」
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昨夜、ワークショップ終了後、スタッフと有志の方々で訪れた居酒屋にて。監督と受講生のみなさんが盛り上がっていたのは当然、ワークショップの反省会。特に、後半クラスの課題脚本の解釈については意見が分かれるところ。お互いを想いあっている男女なのに、どうして一緒にいられなくなってしまうのか。互いを傷つけてしまうのか。複雑な感情のぶつかり合いは、さすがの谷口監督といえども「これが正解」と断言できるものではありません。すると、ある女性受講生が興味深い意見を述べたのです。
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「くっつくことでお互いを縛りつけたくないのではないでしょうか 」
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もちろん、彼女の意見が誰もにとって正しい解釈ではないでしょう。ただし、登場人物の自由で伸びやかなキャラクターを掴むには、良いヒントになる意見だったと思います。
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完全になりきっていた男女逆転劇!
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そんなこんなで、映像を踏まえての反省会を終え、最後の実技に移っていきます。
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課題は昨日と同じですが、後半クラスも前半クラスと同様、男女逆転劇を経て、配役を戻すスタイル。ここで最初に目を引いたのは男性受講生の徹底的な女性役へのなりきりでした!
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座り方から仕草まで、可愛らしいまでの女性ぶり。ともすれば笑いを誘ってしまいそうなことをやっているのに、他の受講生たちは思わず見入ってしまっていました。
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「いやぁ、らしく見えてたねぇ」
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と監督も大喜び!
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「でも、最初のうちはフィットしなくて・・・」
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と謙遜する男性受講生に
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「フィットしても困るよ!」
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と監督からツッコミが。大きな笑いが起きました。
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対抗する女性陣も負けてはいません。ジャケットと帽子に身を包み、奔放な男性役を体当たりで演じていきます。特に、ある受講生のたくましい演技は観ていて惚れ惚れするほど!
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「パーフェクトに近い」
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とまで監督から絶賛の言葉が飛び出しました。
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しかし、肝心なのはその次のテイク。男女逆転で掴んだ相手の気持ちを、本来の配役を演じるときに感じ取らなければなりません。
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監督とパートナーが仕掛けた “ 荒療治 ”
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前半クラスが、男女逆転の経験を次のテイクに上手く生かせていたとすれば、後半クラスは逆に考えすぎてしまった人が多かったかもしれません。演技の過剰さを注意されていたある男性受講生は、余計に過剰さを強めてしまった印象。相手の気持ちが理解できてしまったからこそ、感情表現が強まってしまうのでしょうか?
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そこを直そうと、監督は荒療治を行いました。男性がスタンバイしている間に、パートナーの女性に、脚本とは違う段取りを演じるよう指示したのです。
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テイクが始まり、問題のポイントに差し掛かりました。本来なら男性に呼ばれ、近づいていかなければならないところ。しかし、女性は微動だにしなかったのです。男性の焦り、当惑が観る方にも伝わります。脚本とは違う段取りになるのですが、彼は彼女に自ら近づき、次の台詞を続けていきました。
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「今のうろたえぶりは、喪失感を表現できていたと思う 」
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ようやく、自然な演技に近づいた男性受講生にテイク終了後、監督はそう声をかけました。
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「だけど、脚本通りの動きでも表現できることではある 」
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と注意することも忘れずに。
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監督とパートナーが仕掛けた「ハプニング」によって引き出されたリアルな感情表現。しかし、実際の現場ではハプニングに頼ることはできません。偶然に見えるものを、意図的に演じなければならない、映画の難しさ。それを受講生たちも実感したことでしょう。
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「仕草があっていても気持ちが乗っていなければ偽物に見えてしまう 」
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谷口監督が何度も繰り返し説いてきた演技の本質。それを掴むためのチャレンジは繰り返され、監督、受講生ともに名残惜しい様子ではありましたが、時間切れ。2日間の実技は終わりとなりました。
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最後の谷口監督の挨拶。その場にいる全員が必死で耳を傾けます。
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「テイクを重ねるほど、みんな良くなっていくと感じた。人の気持ちは連続して流れているものだし、その手応えを掴めてくるのだと思う。僕もそういう作品を撮りたいと思っています。」
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受講生の脳裏には、このプロジェクトの最後に製作される谷口監督作品のことがよぎったに違いありません。そう、同じ時間を共有した仲間たちは、ここからはオーディションに挑むにあたってのライバルに変わるのです。
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「今回も良い変化が生まれた人がいっぱいいました。嘘のない芝居ができるようになってください。」
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監督と受講生一同、お互いに深々と礼をして、第3回俳優ワークショップは幕を閉じました。
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挫折を恐れない人に
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その後は予約されていた会場で楽しい打ち上げ。監督、受講生、スタッフごちゃ混ぜで2日間を労いあいました。わたしが若い受講生から「おすすめの映画」を聞かれているとき、ちょうどそのタイミングで谷口監督がテーブルに来られたので、
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「監督が好きな映画って何ですか?」と聞いてみたところ、
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「挫折の映画!」と即答!
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それから、例としてボクシング映画の傑作『ロッキー』を挙げ、受講生に熱く素晴らしさを語ってくれました。
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谷口監督は前回のワークショップ終了後、「受講生には達成感を持って帰ってもらいたい」と語ってくれました。しかし、もしかするとこのワークショップを通じて、迷いや悩みの堂々巡りに入ってしまった人もいるかもしれません。必ずしも、欠点や弱点を克服できた人ばかりではないでしょう。
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ですが、演技の道とは茨の道。一朝一夕で答えが見つかるものではありません。これから味わうやもしれぬ、あるいは既に味わっている挫折感を乗り越えようと藻掻く中で、このワークショップでの経験、谷口監督の言葉は必ずや道標となってくれることでしょう。
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苦渋の挫折や過酷な現実をバネに立ち上がったボクサー、ロッキー・バルボアのように、打ちのめされても挫けない心を備えて、映画というリングに立ち続けることを願っています。
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「 分かってるはずだ
世の中バラ色じゃない 厳しくてつらい所だ
油断したらどん底から抜け出せなくなる
人生ほど重いパンチはない だが大切なのは
どんなに強く打ちのめされても こらえて前に進み続けることだ
そうすれば勝てる
自分の価値を信じるなら パンチを恐れるな
他人を指さして 自分の弱さをそいつのせいするな
それは卑怯者のすることだ お前は違う!
たとえ何があっても 俺はお前を愛し続ける
お前は俺の息子だ 人生のかけがえのない宝だ
自分を信じなきゃ 人生じゃないぞ 」
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(映画『ロッキー・ザ・ファイナル』より、ロッキーから息子への台詞。)
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