【第3回俳優WSレポート 3/4】前半クラス2日目


板についていた男女逆転



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14日午前10時。予告通り、昨日の実技の録画映像を上映するところから、2日目の前半クラスは始まりました。


「詩吟っぽい」_「朗読っぽい」


そんな感想がどの受講生からも共通して出てきました。そう、演技の固さが取れないことが、台詞回しにも表れてしまっていたのです。


「芝居のチャンネルが入ってしまっている。もっと自然体で 」



谷口監督の言葉に神妙に頷く受講生たち。やはり、自分で思っていた自分の演技と、映像で観た自分の演技とではかなりの開きがあったようです。





おそらく、ワークショップを通して谷口監督から指導された内容は、頭では理解できているのでしょう。でも、それを表現するとなると難しい。イメージと現実を重ねられるよう、最後の実技に挑みます。






さて、わたしが個人的にも楽しみにしていた男女逆転劇!男性陣が女性役を、女性陣が男性役を演じる狙いは、「他の登場人物の気持ちを知ること」。昨日、自分の発していた言葉や行動が、相手にどんな感情を呼び起こしていたのか、それを受講生に体感させようというのです。


いざやってみると、男女ともに意外とハマってしまい、びっくり。最年少の参加者である中学生女子が中年男性役を大胆不敵な演技でやってのけ、監督からも「なかなか板についていた」と感嘆の言葉が。会場を盛り上げた時間でした。しかし、男性が女を演じるよりも女性が男を演じる方がやりやすいのか、男性役をのびのびと演じる女性陣に対し、逆に男性陣はやや複雑な心境だったかも・・・。






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段取りの良さだけでは



男女逆転でワンテイク演じた後、同じチームで配役を再逆転。本来の性別に戻り、もうワンテイク演じてもらいます。


すると、男女逆転劇を経た効果なのか、昨日には足りなかった演技の「しなやかさ」が見られるようになってきました。飄々とした兄の態度が、恋心に染まった妹の真剣さによって気圧されていく・・・そんなシーンの流れが、より明確に伝わってくる。2日目にして、受講生たちは脚本のポイントを掴み始めたのです。





出番を終えた受講生たちには、惜しみなく拍手が送られました。ぎこちなさが消えなかった昨日と比べると、誰もに現れた確かな進歩。しかし、自分には同時に湧き上がってもいた、ある思い。それをある受講生が言葉に出した瞬間がありました。


テイクの終了後、後方で芝居を見ていた受講生に感想を求めた谷口監督。すると、その男性受講生は気をつかいながらも、こうコメントしました。


2日目なので段取りは良くなってきたと思います。でも、きれいに丸くまとまってしまったつまらなさがある 」


確かに、描くべきものは描かれるようになり、課題のシーンを成立させるのに必要な要素は揃うようになってきました。それでもいち見学者の意見としては、「まだ足りない」「もっとできるはず」そう思っていた矢先だったので、男性受講生の言葉は自分の心中を代弁されたような気になりました。





決して失望していたわけではありません。むしろ、感動が込み上げてきたのです。


あぁ、この人たちは満足なんてしないんやな・・・


テイクを重ねるごとに、成長があった受講生たち。だけど、目指していたのはもっと高いレベル。演技の核心に触れつつあったからこそ、意識すらできなかった高みが目に映るようになったのではないでしょうか?



終了時間を30分オーバーしつつも、それぞれが2日目で得たものを実技にぶつけていきます。ある人は感情を曝け出し、ある人はあえて抑制し、独りよがりにならず相手の気持ちを受けながら、「嘘が真実になる瞬間」を生み出すためにもがきます。


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谷口監督から、最後のメッセージ



達成感を得られた人、不完全燃焼の人、様々な人がいたでしょうが、名残惜しくも前半クラスの2日間は幕を閉じました。谷口監督から、最後に若い受講生たちへメッセージが送られます。



「何度も言ってきたことだけど、芝居というのは(登場人物の)気持ちをものにして瞬間を生きられるかどうか。このワークショップではそれ以外のことは言わずに指導してきた。それができたとき、人の心を動かす。だけど、芝居は一人だけで作るものではない。相手がいる以上、気持ちは自然発生的に出せるようになってほしい。気持ちに嘘をつかないこと 」



7月から全3回のワークショップをスタッフの立場から見守ってきましたが、谷口監督は受講生の「台詞回し」や「発声」などの表面的な部分にはほとんど触れることがありませんでした。それよりも、気持ちの部分をどう持っていたか。それだけを集中して教えようとしていました。外面の技術はすぐに身につくものではない。でも、内面の技術はきっかけ次第で習得できるかもしれない。そのきっかけとしてこのワークショップを思い出してくれたら、と願います。


続いて映画24KYOTOで製作する予定の谷口監督作品についての進捗状況を発表。今回、108通の公募シナリオを「該当作なし」とするほど、「これぞという一本」にこだわっている谷口監督。撮影やオーディションの時期について、現状伝えられるところの説明がありました。


「もっといい俳優になって、どこかの現場で会いましょう!」


谷口監督の結びの一言は、単なる社交辞令ではなく、受講生との絆があるからこそ口に出た「約束」なのではないか?だとすれば、それを実現するために、受講生のみなさんがこれからの俳優人生を実りあるものにしてゆくことを期待しています!たくさんの映画を観て、たくさんの作品に参加して、良い仲間と巡り合ってください!そして、近い将来、スクリーンでその顔を見せてくださいね!









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