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▶はじめての経験~自分の演技を観る~______
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2012年9月9日。映画24区KYOTO第2回ワークショップ2日目の朝です。
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昨日とは打って変わって澄み渡ったお天気。気持ちのいい朝の光が、障子越しに町家スタジオの室内に差し込んでいました。
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定刻の10時ぴったりに前半クラス授業開始。
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待機時間の自主練習中にも何やらソワソワした空気が受講生の間に感じ取れましたが、それもそのはず。この日の授業の最初には、昨日の演技をスクリーンで鑑賞する、というプログラムが組まれていたのです。しかも、受講生全員で。ほぼ全員、自分の演技を観るのは初めての体験。昨日から期待と照れの入り混じった複雑な表情が浮かんでいました。
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さて早速順番に、各ペアが昨日行った演技をスクリーンに映し出していきます。撮影する運営スタッフは大学で映画を学ぶ学生。ブレのある手持ちカメラの映像ながら、アングルやカメラワークは映画的感性に貫かれたもの。改めてこのワークショップの目的が「映画人」育成にあるのだと実感します。
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1ペアにつき、通しで1回、所々止めて監督のコメントを挿みながら1回、最低2回は鑑賞していきます。鑑賞中の受講生のリアクションは様々。頭を抱えてしまう人もいれば、じっとスクリーンを見据えている人、複雑な笑いを浮かべてしまう人・・・。それぞれが、初めて見る「演技者」としての自分と向き合います。
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本人が監督に感想を求められたとき、口をつくのは反省の言葉ばかり。
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「思っていたのと違う・・・」
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「自然な演技を心がけていたのに全然自然じゃなかった・・・」
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昨日は自画自賛していた人も
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「自分の演技が嫌・・・」
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ともらし、思わず笑いがこぼれてしまう瞬間もありました。
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一方で監督や仲間の意見に俯いてしまう人も・・・。
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それでも、落ち込んでばかりではいられません。谷口監督や他の受講生のアドバイスに耳を傾けながら、どうすれば自分の演技が改善されるのか、真剣に考えていきます。おそらく1日目や前回のワークショップでは、指摘されてもピンとこなかったアドバイスもあったかもしれません。しかし、自分の演技を自分で確認することで、より欠点を受け入れることが容易になったのではないでしょうか。
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▶舞台と映画の演技の違いとは・・・______
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映像は嘘をつきません。そして、ちょっとした表情や仕草もアップで捉えているため、ほんの僅かな気の緩み、集中力を欠いた瞬間が、克明に記録されてしまうのです。見学者としては、生で演技を観ているときと、映像で観たときとで印象の変わる受講生が多かったことに驚きがありました。そして、改めて「映画俳優」として演技することの難しさに思い至りました。
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特に苦戦していたように思えたのは、舞台経験のある受講生たち。演技の基礎は学んでいる筈なのに、どうしてカメラを前にした演技が上手くいかないのだろう?そんな悔しさが観ているこちらにも伝わってくるようでした。
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「舞台と映画で違うのは、誰に向けて演技をするか」
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谷口監督はそう説明します。
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「舞台は観客に感情を伝えなければならない。だから大きな動きが求められる。だけど、映画は相手(共演者)と芝居するもの」
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役者同士が阿吽の呼吸で生みだした世界観を、カメラが切り取り、観客に向けて映画を作り上げていく・・・。それはまた、谷口監督にとっての映画作りの矜持だったのかもしれません。
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鑑賞会中、谷口監督が口にする受講生の長所、短所はいずれもかなりきめ細かいもの。それにつられてか、受講生とのディスカッションも自然とかなり細かい領域になり、「小道具のノートをどのように持つべきか」、までのレベルに話は及んだのでした。
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▶男性陣は「柔らかさ」、女性陣は「衝動」をテーマに実技______
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全員が自分の演技を確認したところで、最後の実習に移ります。予定では、本日の課題として昨日とは別のシーンを演じることになっており、受講生たちもその準備をしてきたのですが、さっきまでの映像を観た後では切り替えることができるか心配・・・。
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そんな空気を読んでか、谷口監督が「やっぱり昨日と同じとこやりたいよな」と提案。急遽、中庭に出て同じシーンを演じる運びとなりました。
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鑑賞会を経て、監督が指摘し続けていたこと。
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男性陣には「固さをなくして、柔らかく演技しなさい」
女性陣には「感情の衝動を出せるようになりなさい」
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その他、細かい修正点はたくさんあるのですが、特にこの2点を念頭に置きつつ、昨日と同じく、男女ペアで演技が行われていきます。気付いた点としては、アドリブの回数が増えたこと。それは「柔らかさ」「衝動」を表現するために、受講生たちが考え、実行していた結果なのだと思います。
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昨日は屋外の雰囲気にのまれていたところもあったのでしょう。テイクの間にペア同士、リラックスしたやりとりが見られるようになり、緊張が随分とれてきたようでした。
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2日目の男性陣は成長めざましかったのですが、特に、散々「固さ」を注意されていた男の子が開眼したようでした。男性陣は人数の少なさから、何度もペアを変えて演技するチャンスに恵まれていたのも吉と出たのか、テイクを重ねるごとに彼の演技が良くなっていくのが分かりました。
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監督に「今日一番伸びたんじゃないか?」と誉められ、ガッツポーズする微笑ましい場面もありました。
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女性陣では「衝動」を表現するあまり、感極まって涙を流す受講生も。一方で、最年少の受講生は、2日間で演技は上達したものの、最後まで「人前で恋愛の演技をすること」の恥ずかしさを振り払えなかった様子。「まずは恥ずかしいと思う気持ちをなくさないとね」と監督からアドバイスが送られました。
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▶短時間で成長を見せてくれた若い受講生たち______
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最後は室内に戻り、監督から総評が述べられました。
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「自分の演技を観る機会はなかなか無かったと思うけど、芝居の怖さを知ってくれたんじゃないだろうか。共演者と互いの意図が通じているかどうかをこれからも意識してほしい。相手あっての芝居だから」
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「プランや作戦を持つのもいいけど、そこにとらわれず、あるがままを表現しなければ。制約の中で制約に負けず、キャラクターになりきる二律背反。それを極めていこう」
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言葉を、表現を変え、谷口監督が受講生に口を酸っぱくして言い続けてきたこと。「一人で芝居しない」「脚本に書かれていない感情を出す」、それを最後にも強調して締めの言葉となりました。この2日間の特別な経験を通して、若い受講生たちの胸にも真っ直ぐ、その言葉は突き刺さったことでしょう。
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また、三谷氏からも「若いうちに良い映画をいっぱい映画館で観てください」との言葉が送られました。京都にはシネマコンプレックス、ミニシアター、公共の常設上映館など、多様性のある映画文化が息づいています。京都で映画俳優や映画制作を目指す人には、ぜひともそんな“地の利”を最大限に利用してほしいと、私のような一映画ファンとしても、強く願います。
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第1回よりもくだけたムードながら、よりバラエティーに富んだ内容となった第2回ワークショップ。その前半クラスは、若さゆえなのか、観ている側が驚くほどの対応力を発揮してくれ、短時間での成長が手に取るように分かりました。谷口監督が受講生に2日間の感想を求められたところ、
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「第1回の後悔をバネにして、今回は楽しむことができた」
「今回初めて自分の演技を観たけれど、いつか自分の演技を良いと言えるような役者になりたい」
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と心強い声が返ってきました。
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彼らの中から将来、日本映画を支えるような才能が現れることを、願ってやみません。そして、映画24区KYOTOはそんな才能の発掘、育成にこれからも全力で取り組んでいきたい。若い力から逆に刺激を与えてもらえるような、そんな活力あふれる前半クラスの2日間でした。
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