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▶偶発的に見えるものを繰り返す高等技術に近づいてほしい______
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9月9日。
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映画24区KYOTO第2回俳優ワークショップの2日目。昨日は演じる側も観る側も涙、涙の連続で、かなり特殊な雰囲気となった後半クラス。受付開始から授業まで、自主練習をこなす受講生のみなさんは、年長クラスらしい落ち着きを見せてはいますが、正直、実技が始まってしまえばどう転がっていくのかが分からない・・・そんな予測不能さが漂っていました。
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冒頭、軽いハプニングがありました。これまでのワークショップで初めて、谷口監督が「遅刻」をされてしまったこと。たった1分ではありますが。
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理由は、夜の打ち上げに参加できない前半クラスの受講生と、少しでも交流の時間を持とうとして近くの喫茶店に顔を出していたから。真面目な谷口監督らしい一幕でした。
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さて、後半クラスもまずは昨日の実技を映像で確認することから始めます。進行は前半クラスと同じ。各ペアの映像を順番に最低2回は観て、ディスカッションを交えつつ、細かく分析していきます。
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ここで戸惑いの空気になったのは、昨日、大絶賛された若い「兄妹」ペアの映像が流されたとき。1度通しで観て、監督が受講生の一人に「どうだった?」と感想を求めます。受講生の方は躊躇いながらも「昨日はこの前のテイクがすごく良かったんですよね・・・」と返答。すると、周りも自然と頷いてしまいました。
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そう、昨日は誰もが認める感動的な演技を見せていたのに、「本番」の映像はどこかちぐはぐで噛み合っていないもの。もっとも深く実感していたのは本人たちのようで、苦笑を浮かべながら「みなさんに褒められたのがプレッシャーになってしまい・・・」と悔しそうでした。
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「これが現場ならどうしてくれよう!テストで最高の演技ができてたのに、本番でトチるなんて!」と谷口監督。続けた言葉は映画での演技の本質を突くものでした。
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「偶発的にすごい演技ができるのはもちろんいいこと。だけど、映画とはテイクを重ねるもの。偶発的に見えるものを繰り返す高等技術。そこに近づいてほしい」
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映画の現場では、偶然が重なって一度だけ良い演技ができるのでは意味がありません。高いレベルの演技を何度も繰り返す。厳しい見方かもしれませんが、それがプロフェッショナルの仕事。受講生たちも真剣に耳を傾けていました。
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▶配役が変わったことで起こった変化______
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そんな演技の難しさを感じながら、後半クラスも実技に入ります。昨日と同じシーンを、ペアや配役を変えて演じることに。昨日のペアで上手くいっていた受講生も、今日は全く違う相手と、違う配役で良い演技を見せることができるのでしょうか?まさに真価が問われる時間でした。
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このシーンのポイントは、相手への思いやりをどう表現するか。言葉と気持ちが同じとは限らない、複雑さ。それと同時に、お互いの間にあるはずの親密さも伝えなければいけません。例えば、「友人同士」という設定で演じた女性ペアは昨日よりも活き活きと演じているように見えました。思わず監督が「君達って前からの知り合いとかじゃないの?」と聞いたほど。配役を交換しても、変わらずに積年の友情がきめ細かく演じられていました。逆に配役が変わってしまったことで感覚を掴めなくなってしまう人も・・・。1日目はスムーズに演じられていた受講生も、相手との意思疎通に苦しんでいるような瞬間がありました。そういう人には監督から助言が与えられます。
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「もしも気持ちが乗らなければ、脚本の台詞を変えてもいいんだよ」
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大切なのは脚本で描かれている空気、テーマを再現すること。そこに至るために、個人個人でアプローチを変えてもいいと、監督は伝えたのでした。
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2日目でどう変わるかは人それぞれ。同じシーンを繰り返すことで、こなれてしまって感情移入が難しくなる人もいれば、逆に感極まって会場を飛び出してしまった人もいます。課題脚本の重い設定は、役に入り込めば入り込むほど、演じること自体を辛くさせてしまったのかもしれません。また、役になりきるためのユニークな工夫もそこかしこに見られました。方言で話すことで、より台詞を自分の側に近づけようとするなど、それぞれの方法でキャラクターになりきる努力がなされていました。
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▶谷口監督「みんなの演技にぐっと来て・・・」______
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30分オーバーで実技終了。
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ともすると、この2日間、全員が自分自身に満足のいく出来ではなかったかもしれません。後半クラスは基礎的なスキルの高い年長クラス。だからこそ、越えなければいけないハードルはより高いのです。
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ですが、見学者の位置からは、谷口監督の指導を受けていくうち、みなさんが演技の本質を掴み始めたように思えました。彼ら彼女らが、それぞれの現場へと戻っていき、どんな化学反応を起こしていくのか。期待しながら待ちたいと思います。
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最後は谷口監督から締めの挨拶。
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「演技理論なんてものは口で教えられるものじゃないと思っている。映画人として自分の心を動かす“それしかないもの”を目指す。ワークショップでも現場でもそれは変わらない。虚構が本当になる瞬間が映画を作るということ。今回はいろんな人の芝居を観ることができて良かった。こっちがみんなの演技にぐっと来て、顔を見て話せない時もあった。みんな1日目と比べて良くなっていた」
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谷口監督の言葉に自然と拍手が起こり、これで長かった第2回俳優ワークショップの全日程が終了となりました。
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全体的な感想としては、日本家屋を舞台としたことで、監督と受講生の距離が縮まったように思えたこと、それがディスカッションに活気をもたらしていたことなどが、第1回と比べての進行上の改善点だったと思います。また、2クラス制の導入も、受講生、監督、双方の集中力の持続を考えたとき、効果的だったのではないでしょうか。
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▶打ち上げで谷口監督に突撃インタビュー!!______
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では、恒例となった打ち上げ会場での谷口監督インタビューで、このレポートを締めくくりたいと思います!
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―監督は受講生との会話をすごく大切にして指導されますよね。だけど、もっと頭ごなしに「これをやれ!分かったか!」って怒鳴りつけたくなることはないんですか?
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谷口監督「頭をよぎることはあるよ(笑)。だけど、撮影現場ならともかく、全部で3回、6日間しかないワークショップでそれをやるとフォローしてる時間がないでしょ」
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―確かに、しこりが残るかもしれません。
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谷口監督「いや、“かも”って言うより確実に残る。それよりも、せっかく来てくれたからには、受講生に何らかの達成感が残ることを優先して指導したい」
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―前回よりも受講生とのコミュニケーションがスムーズになっているように見えました。
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谷口監督「確かに一回目よりやりやすかったね。向こうもこっちの言ってることはもう掴んでくれてると思うから」
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―監督がノッてきた、と思えるような瞬間も多かったです。
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谷口監督「僕が、というよりも役者の人がノッてくるのが一番大切。それに合わせてこっちもノッてくるんだよ」
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谷口監督の指導スタイルはあくまでも「役者ありき」。ご自身の監督作でも、出演者の地の魅力をにじませるような演出に定評があります。
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このワークショップを通じて、谷口監督の演出マジックの秘密を垣間見た思いです。そして、着実に受講生のみなさんも、監督の演出に応えられるようになってきている・・・。
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映画24区KYOTO俳優ワークショップは10月13~14日に開催される第3回を持って、とりあえず全行程を終了する予定です。谷口監督と受講生が積み上げてきたワークショップの時間が、どんな大団円を迎えるのか?そして来るべき作品制作はどんなものになるのか?スタッフ一同、日々精進しながらも見守っていくつもりです!今後とも映画24区KYOTOをよろしくお願いいたします!
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