さて、7月21日、22日の二日間、遂に[映画24区KYOTO 2012]第1回俳優ワークショップが開催され、総勢31名の受講生が実技を通して、谷口正晃監督、渾身の演技指導を受けました。まるで映画の撮影現場のような・・・、いえ、撮影現場そのものの熱気を伴った二日間を、間近で見守ったスタッフがレポートにまとめました!まずは第一日目のレポートです!
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2012年7月21日。元・立誠小学校の講堂。
いよいよ[映画24区KYOTO 2012]第1回俳優ワークショップが当日を迎えることができました!開場とともに、受付を済ませて続々と集まってきた受講生のみなさん。緊張感が空間を満たします。
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それにしても、これだけいろんな顔ぶれが一堂に会する場所って、あんまりないような。受講生の最年少は12歳、最年長は49歳。一人一人のプロフィールを見ても、劇団員、事務所所属のタレント、シンガー、公務員、学生…本当に幅広い総勢31人です。
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13時ぴったり、予定通りにワークショップが開始しました。
最初に谷口監督から
「撮影現場と同じことを出していく」
「できるまで繰り返しやっていく」
との表明があります。
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「あなたにとって良い演技とは?」
「どんな役者になりたい?」
受講者に事前に渡されていたプロフィールシートを参考に、ひとりひとりが谷口監督と皆の前に出て自己PRを行います。質問するだけではなく、谷口監督は受講生の答えに対しても更に突っ込んでいきます。
「コミュニケーション、それしかないでしょう。」
谷口監督は演出の秘訣をそう語っていました。だとすれば、この時点で既に谷口監督の演出は始まっていたのかもしれません。それでも、この時点では受講生の表情がまだ硬いように思えました。
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そしていよいよ実技開始!谷口監督の指導方法はいたってシンプル。人の実技を見ている受講生に疑問を投げかけることで、一緒に良い演技を引き出そうとしていきます。
「ヨーイ、ハイ!」
テイクの最初に必ずそう掛け声をかける谷口監督。まるで助監督がカチンコを鳴らす音が聞こえてくるようです。そう、これは紛れもなく谷口監督の「現場」。受講生たちは見えないカメラやマイクに囲まれて、見えないフレームの中で演技をしているのです。
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谷口監督の演技指導を見ていて思ったのは、とにかく細かい、ということ。映画における演出のプロとして、長年最前線で活躍してきただけに、僅かなポイントもまるでモニター越しに顔のアップを捉えているみたいに見逃しません。
「どうして視線を外したのか?」
「どうして立ち止まったのか?」
「どうしてそんなに相手と距離をとるのか?」
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演者が何気なく行ったのであろう仕草の一つ一つを追求し、考えることを促していきます。決して答えを押し付けることはしない代わりに、受講生に奔放な解釈を許しているわけでもありません。疑問を投げかけ、演者の問題を明らかにすることで、共に演技を改善していこうとしているのです。
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受講生によって演技スタイルは十人十色。演劇的にダイナミックな動きと発声が得意な人、より自然で繊細な演技を得意とする人、台詞を暗唱するだけで精一杯の人、明るい個性、影のある個性・・・。
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谷口監督は、そういった演者の個性や技術的な部分に対してはほとんど修正を行いませんでした。台詞が飛ぼうと、呂律が回らなくなろうと、途中で止めたりはしないし、後で注意することもありません。
逆に、谷口監督が繰り返し言い伝えていたこと。それは大きく分けて二つだったと思います。
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まず、「一人で芝居をするな」
演技とは、気持ちのぶつけ合い。演技の相手がいる以上は、相手に向けて台詞を発し、アクションを起こさなければ、一人芝居と変わりません。だからこそ、谷口監督はただ台詞を喋るだけでなく、相手へのリアクションを徹底して指導していたのです。
「そんなことを言われたら君はどう思う?」
「相手がいつもと違うことをしているのに君は何も感じないのか?」
時には、パートナーを入れ替えながら、演者同士の相乗効果で場面を作り上げることの大切さを受講生に教えていきます。
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そしてふたつめは、「台詞を言わされるな」
台詞とは単なる言葉。登場人物が必ずしも台詞通りの心情でいるとは限りません。それよりも谷口監督は脚本におけるシーンの前後を読み込んだうえで、登場人物がどんな気持ちで課題のシーンに登場してくるのか、それを受講生に叩き込んでいきます。
「君たちは出会って何度目の関係なんだ?」
「君がこの場面で本当に言いたいことは何だ?」
登場人物の心境を課題のシーンだけでなく、台本全体の流れから理解し、自然に台詞を発するよう、演者に要求していきます。
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そうそう、こんな場面がありました。実技中、演者の一人が小道具を取り落としてしまったのです。すると、パートナーの方がすかさず「飲みすぎじゃない?」とアドリブ。テイクが終わってから、谷口監督は「今の呼吸が演技なんだ」と二人を誉めたのでした。
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時間の経過とともに、谷口監督のスタイルを飲み込んでいったように見える受講生たち。中には、監督に意見をぶつけ返す演者も登場するなど、終始真剣そのものです。
「嘘を真剣に演じることによって、真実が生まれおちる。
フィクションがドキュメンタリーに変わるんだ。それを忘れないでください。」
谷口監督がこの言葉で締め、ワークショップ初日は終了となりました。
気づいてみれば予定よりも2時間延長。それでもあっという間に駆け抜けた時間でした。
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その後、ジュースとお菓子を片手に、反省&懇親会。受講生たちは、既に赤の他人から、同じく演技を愛する仲間に変わっているように見えました。聞く所によると、この後、一緒にごはんを食べに行った人達もいるとか。
この日、手応えを掴めた人、掴めなかった人、楽しめた人、悔いが残った人・・・様々な思いを糧にして、明日の最終日に備えてほしい、心からそう願いました。
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この日は激しい雨が強く地面を叩いていて、グラウンドに響く雨音が会場の講堂にも絶えず入り込んでいました。エアコンもない古い広い講堂で、窓を閉め切るとサウナ状態になるので、窓は全開放。湿気と暑気と大音量の雨音、という環境の中でしたが、むしろ受講者の皆さんの集中力はものすごい高まりを見せていたように感じました。
さて、そんな一日目を経て、徐々にワークショップの空気にも慣れていった受講生の方々が、二日目でどんな風に成長を見せたのでしょうか?次回、レポート第2弾です!
_is
初めてワークショップを受講しようと思っていましたが、
10月の日程が舞台本番前稽古と被って参加できません。
10月以降もワークショップの予定はありますか?
池内美有 1998/5/18生まれ 14才
NASAエンターテインメント所属
10月18日から大阪俳優市場に出演
池内さま
こんにちは。コメントありがとうございます。
今回の【映画24区KYOTO 2012】プロジェクトの中では、俳優ワークショップは10月開催の第3回目が最後です。なので、2012年中は予定はありません。
しかし、2013年のプロジェクトを現在企画中です。このようなプロジェクトは続けていくつもりですので、これからもご注目くださいね。
あと、第2回(9/8、9)、第3回(10/13、14)の俳優ワークショップで、見学コースを募集するかもしれません(現在検討中です)。その場合はこちらの特設サイトで告知を出します。
いかがでしょうか?
他にもご質問があったらお気軽にコメントくださいね。
シマフィルム 田中