見学していてもこわいくらいに伝わるほど、真剣で熱かったワークショップ一日目。二日目ともなれば相当にみなさん疲労困憊なのでは…というスタッフの浅はかな予想は見事に外れます。ついに最終日となった[映画24区KYOTO 2012]第1回俳優ワークショップ二日目のレポート!
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2012年7月22日。
激しい雨にたたられた前日とは打って変わり、快晴となったワークショップ最終日。変わったのは天気だけではなかったのです。この日、受講生の一番乗りは授業開始の90分前に到着!その後も、みなさん昨日以上に早く会場入り。仲間と一緒にリハーサルや本読みで、演技のすり合わせを行っていきます。一日みっちり指導を受けた仲間として、受講者同士、かなり打ち解けてきたようでした。
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かくして二日目も昨日と同じく13時きっかりに授業開始となりました。
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驚いたのは、ワークショップの雰囲気に大きな変化が生まれていたことです。昨日よりもずっと笑い声や、自分から意見を言う人が増えていました。かといって、楽しいだけの緩んだ空気になっているわけではなく、昨日の緊張感もいい具合に継続。ただ、谷口監督も受講生もお互いをリスペクトしつつ、遠慮がなくなってきたようでした。
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「コミュニケーション、それしかないでしょ」
再び谷口監督の印象的な言葉がよぎります。昨日一日かけて演技を通し、コミュニケーションを行ってきた谷口監督と受講生の間に、もはや壁はありませんでした。
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こうなると谷口監督の指導もノッてきます!
この日は注意点があれば、実技を止めてその場でどんどん伝えていきます。
投げかけられる言葉もより鋭く、厳しくなっていきました。
「俺には君が格好つけて演技しているだけに見えたな」
「彼女はスターの役のはず。だけど、ここにはスターがいなかった」
ぶっちゃけ、見ていてヒヤリとさせられました(笑)。
だけど、めげない受講生の姿で気づきました。
それらは決して、受講生を貶めようとしての言葉ではなく、信頼の証。プロの映画人が、受講生を一人の役者として認めているからこそ、包み隠さず思いをぶつけ、受講生もまたそれに応えようとしている。講師と受講生の関係は、共に過ごした時間を経て、監督と役者の関係に徐々に変化している…そんなことを感じていました。
自分の実技の番でなくても、他の人の演技と監督の言葉から少しでも多くのものを吸収しようと、鋭い眼差しでメモをとります。
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実技が進む中、監督がある演者さんに、昨日までにはなかったパターンで演技の注文をつけ始めました。
「貴方は泣きの芝居をしたほうがいいかもしれないね」
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二日間を通してはじめて、台本には書かれていない“泣きの芝居”を加えていきました。すると、どこかよそよそしかった演技に真実味が増すようになってきたのでした。他の演者に対しても同じく、偽りのない感情をきちんと出すように指導を繰り返す谷口監督。それはただ「台本に書かれたままの演技」を越えて、「血の通った本物の感情にあふれた演技」に近づくための演出だったのではないでしょうか。ここは撮影現場ではありません。けれども徐々に「映画の現場」になっていっている…そう思えました。
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休憩中、監督が運営スタッフに終了時刻の確認をしに来ました。
スタッフ「ワークショップは18時終了予定です」
谷口監督「打ち上げはもう予約してるんだよね」
スタッフ「ええ、でも皆さんからすれば、こっち(ワークショップ)をがっつりやっていただいたほうがありがたいとは思うんですが…」
谷口監督「そうだよね」
間違いなく今日も、谷口監督は時間を押してでも全員にきっちり演技指導を行うつもりだったのでした。時間があるからと指導を省略し、サクサクと進めていくような人ではなかったのです。映画人としての意識の高さが窺えたのと同時に、引き受けた仕事への妥協のなさはすべての職業人にとっても良きお手本とすべき姿勢じゃないかと私は憧れを抱いてしまいました。このワークショップを通して自分の中で、谷口正晃監督が好きな映画監督から、同じ大人として、尊敬する人物に変わった瞬間でした。
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…結果、この日の終了時刻は20時半。なんと予定終了時刻の2時間半押しとなりました。
会場の元・立誠小学校が21時前撤収厳守だったので、内心ヒヤヒヤしつつ…。終わるまで続けさせていただいた元・立誠小学校事務局さんにも本当に感謝です。
★ひとつ反省点をあげますと、2日とも時間が大幅に押したのは、今回、当初設定していた定員数よりも多い受講者数(今回は締切までに申し込みいただいた全ての方)での開催に私ども運営側が踏み切ったことも要因の一つであります。京都でこうした形でプロジェクトを行なう初の試みでもあり、判断をいたしました次第です。運営側としては、ひとつの重要な反省点として監督とも話しを重ねて調整し、次に活かしてゆく所存です。より良い環境で受講生のみなさんにワークショップを体験していただけるよう改善に努めますので、今後ともよろしくお願いいたします!
__さてその後、場所を近所の居酒屋に移し、打ち上げという名の反省会。すっかりリラックスモードの受講生さんたちに私が話を聞いて回ったところ、
「楽しかった」
「機会があればまた受講したい」
「自分で演じるにせよ、他人の演技を見るにせよ、同じくらい刺激になるし、勉強になった」
という言葉をいただくことができました。
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また、
「課題台本と共に、谷口監督の作風に自分が染められていく感じがして嬉しかった」
という興味深い感想も。私が抱いた、映画作りの現場に遭遇したような感覚…それもあながち錯覚ではなかったのかもしれません。
最後に、打ち上げの席でお酒が入り、すっかり上機嫌になられていた監督が、二日間を締めくくるインタビューを快諾して下さったので、それをもって本稿を終えます!
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――今回のワークショップを見ていて、演技のスキルというよりはむしろシーンの読解力、台本の読み込みを意識するよう指導されているように思えました。
【谷口】でもそれは当たり前のことでしょ。演技の基本ですから。
――年少の受講生にも指導は変わらず容赦ありませんでしたね。
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【谷口】そりゃそうだよ!子供だからって甘やかしたところで本人のためになんないよ(笑)!「はあい、ぼうや~、よくできまちたね~♪」なんてしてたら逆に失礼。ここに来てくれた以上は誰であれ一人の役者として扱うよ。
――課題の難易度もどんどん上がっていきましたが、受講生の演技はどう映っていたのでしょう?
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【谷口】(受講生からすると)難しかっただろうね(笑)。でも、それでもこちらの要求に応えてくれる瞬間はあったし、やりがいはありましたよ。
――ずっとテイクの最初に「ヨーイ、ハイ!」と掛け声をかけていらっしゃったのが、実際の撮影現場を見ているようでした。
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【谷口】(撮影)現場と同じつもりでやっているからね。まあ、現場と同じくらいの時間さえあればもっとテイクを重ねて、もっといい演技を引き出せたと思う。
――でも、受講生全員に直接指導ができたのはよかったんじゃないでしょうか?(周りの受講生、頷く)
【谷口】全然足りないよ!全っ然足りないねっ!時間はもっとほしい!
お酒に酔っても映画人、谷口正晃監督なのでした!
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谷口監督、受講生のみなさん、二日間お疲れ様でした!
早くも第2回俳優ワークショップが9月8日、9日に控えています。受講生も第1回から継続してご参加の方々もいらっしゃるようです。今度は「京都リサーチパーク町家スタジオ」に舞台を移し、どんな授業内容になるのか楽しみです!その頃には公募シナリオの選定も終わっていて、今回制作する映画の準備も始まっているはず!今後も[映画24区KYOTO 2012]から目が離せませんよ!
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