【レポート】『1+1=1 1』関西プレミア&矢崎仁司監督来場!



9月25日、同志社大学・寒梅館クローバーホールにて、STEP BY 映画24区KYOTO vol.2が開催されました。


映画24区第2回製作作品『1+1=1 1』の関西プレミア上映と矢崎仁司監督の来場が目玉。
とても刺激的な一夜になりました。レポートをどうぞ!


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『三月のライオン』『ストロベリーショートケイクス』、『スイートリトルライズ』などの映画で多くの支持者を生み出し続けてきた矢崎仁司監督。


矢崎作品の特徴と言えば、現代版おとぎ話とも言うべき心地よい浮遊感。でも、決して現実逃避のみに終わるのではなく、映画の端々にドライな現実が顔を出し、観る者はヒリヒリした痛みを感じずにはいられません。


そんな矢崎仁司監督の最新作『1+1=1 1』(読み方:イチタスイチハイチイチ)の上映が、925日、同志社大学にて行われました。





東京に住む若者達の、とある一日の姿を追った本作。驚くべきことに、23人の登場人物すべてが主役という、大胆かつ独特の語り口にまずは圧倒されます。


刹那的な暮らしを続けるバンドマン、風俗店で働く女の子たちと店長の繰り広げる「告白大会」、どこか投げやりに死への思索にふける女子高生…。淡々とした日常の中、画面に漂う不安と焦燥。それはどこから来るものなのか?


その答えは一見風変りな本作のタイトルに隠されていました。
発端は2011310日にまで遡ります。





その日、矢崎監督は生死にかかわる事故に見舞われたそうです。下半身に重症を負い、救急ヘリが矢崎監督を病院まで運んだということです。意識が覚醒した時、監督は病院のベッドの上でした。そして訪れた “ 大震災 ” 。ほとんど身動きの取れない状態で、矢崎監督は強い揺れを体験したと言います。


もしも事故が1日後だったら、病院まで搬送してくれたヘリが(震災の状況で)出払っていて、自分は助からなかっただろう・・・。


紙一重の「生」と「死」。運命めいた偶然のめぐり合わせ。


矢崎監督にとって事故と震災の関係は、人生観を見直すきっかけとなった。


そんな矢崎監督にとって、多くの命が失われた大震災後、日本中の空気は違和感を抱かずにいられないものだったそうです。


病室のベッドで連日の報道に耳を傾けながら、「世間が同じ方向を向いてしまっている怖さ」を募らせていった矢崎監督。「絆」や「がんばろう」という単純な言葉に、人々の感情が集約されてしまっていいのか?


日本中が未曾有の事態に直面していたその時期、世間と隔絶した病院のベッドで過ごした矢崎監督は、その半年後、『1+11 1』をつくった。


このタイトルに込められたもの。“1+1”が“2”にならない世界を矢崎監督は肯定します。個の集まりがどんなに大きくなっても個であり続けてほしい。みんな一緒じゃなくていい。





この作品を観れば、そんなメッセージが全篇に貫かれていることが感じ取れるのではないかと思います。23人もの登場人物たちの人生が交錯し、ときには理解しあえる可能性を示唆しながらも、映画は彼等の関係性を深く掘り下げたりはしません。それぞれの痛みが、他人によって癒されることはない。でも、それゆえに、ありのままの個人が湛えている人間らしさが強調されてもいる。





1+1=1 1』が観客に見せるのは、世界の在り様が変わってしまった不安定な毎日を、誰かの言葉に左右されずに受け止めていくことの大切さです。例え、そこで曝け出すのが弱さやみっともなさでもいい。矢崎監督は世界の前であまりにも矮小に見える人間存在を、そっと、しかし強く励ましているようです。


映画24区第2回製作作品となった本作。矢崎監督は噛みしめるように、長い時間をかけてゆっくりと完成させました。タイトなスケジュールと予算に縛られて、巨匠クラスの作品でもしばしば妥協を受け入れながら撮影を進めていかざるを得ない昨今の日本映画界において、本作で矢崎監督が貫いた撮影スタイルは、お金に変えられない贅沢と言えるのではないでしょうか。





「常に過去の自分を超えようとしている」

「昔は寡作とよく言われたけど、今は考えを変えて仕事を断らないようにしている」



上映後、矢崎監督から発せられたのは、ポジティブな言葉の数々。大きな苦難を乗り越え、映画の現場に戻ってきた奇才は今、新たなステージの第一章を描きはじめた・・・そんなイメージが沸き立つようなバイタリティー溢れる作品と言葉を、観客に投げかけてくれました。






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【『1+1=1 1』京阪神劇場公開情報!】

大阪 ▼ シネ・ヌーヴォ_11/3よりロードショー!_______
★初日、矢崎仁司監督、武田知愛さん(『1+1=1 1』脚本)来場!

11/3〜11/9、「矢崎仁司監督特集」開催!
最新作『1+1=1 1』の公開を記念して矢崎監督の3つの傑作を特集!
『三月のライオン』(代表作を35mmニュープリント版で!)
『花を摘む少女と虫を殺す少女』(未ソフト化の傑作!)
『ストロベリーショートケイクス』(魚喃キリコ×池脇千鶴×矢崎仁司!)


神戸 ▼ 元町映画館_12月上映予定!_____________
12月、『1+1=1 1』、『三月のライオン』上映決定!


京都 ▼ 京都シネマ_近日上映予定!_____________
『1+1=1 1』近日公開予定!


今、日本で観て、感じてほしい作品です。皆さまぜひ劇場でご覧ください!



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