【第2回俳優WSレポート 2/4】後半クラス1日目



9月8日午後3時。


前半クラス終了からわずか30分後。まだ余韻冷めやらぬ会場に、後半クラス受講生の面々が集ってきました。前半クラス同様、第1回ワークショップから引き続き参加の方も多く、受講生同士とも、スタッフとも打ち解けた挨拶を交わし、受付を済ませていきます。


▶落ち着いた雰囲気で後半クラス開始      


3
時半になり、予定通りに後半クラス開始。最初に映画24区・三谷代表から「緊張し過ぎず、実技に挑んでください」とアドバイス。前回の会場(元立誠小学校・講堂)と比べると、今回は密な空間。講師・谷口監督とのコミュニケーションがとりやすい代わりに演技の機微も伝わりやすくなりました。そこを必要以上に意識せず、実力を出し切れるかは大きなポイントになりそうです。





続いて谷口監督からもご挨拶。課題脚本の内容や授業の流れを説明しながら「せっかく座敷でやるんだから、本当に家にいるようなムードでやりたい」と宣言。固い雰囲気ではなく、あくまで和やかに授業を行いたいという谷口監督の気持ちは前半クラスと変わりありません。


そして、受講生の方々の自己紹介。年長クラスだけあって、みなさん落ち着いた物腰。それぞれの経歴や今回参加の目的、テーマなどを発表していきます。





目的は十人十色。純粋に演技力のステップアップを目指している方もいれば、シナリオライターの立場から映画をより深く理解したい方、中には「演技への情熱を取り戻したい」という役者の方も。この2日間で、それぞれの思いが達成されるのでしょうか?



▶重いテーマに挑む受講生ペアたち      


自己紹介が終われば、さっそく実技開始。今回の課題シーンは2人で演じてもらうため、監督の指示でペアを組み、パートナー同士、実際に演じる前に課題シーンについての解釈のすり合わせ、演技の打ち合わせを行っていきます。





実際の脚本では中年男性の息子とその母親の高年女性という設定ですが、ペアごとに自分たちの年齢、性別に合うよう設定を変え、演技プランを掘り下げていきます。どのペアも真剣そのもの。初対面のペアであっても、演技への情熱は同じ。熱く議論を交わしていきます。


さあ、いよいよ演じる時間です。





今回の芝居の難しさ。それは、「ガン告知」という重いテーマを扱っていること。隠そうとする側の苦しさ、伝えてほしい側の苦しさ。その中で浮かび上がるお互いへの慈しみ。ともすればベタになりかねない場面で、テーマを念頭に置きながらどうやって観る者を感動させるかが演技の焦点となります。


後半クラスは演技経験が豊富な人が多く、発声などの技術面はとても優れていると思えました。ただし、それほどの演者の集まりであっても、物語の重さをなかなか表現しきれず、模索が続きます。





ペアによって設定したお互いの関係性は様々。元の脚本では、お互い深い愛情で結ばれた家族なのですが、「冷めきった夫婦」「仲の好い姉妹」などなど、それぞれの解釈を演技に反映させていきます。


なかには元の脚本の設定から大きく外れたような演技もあったのですが、谷口監督はそれを無下に否定したりはせず、むしろ変更点を活かすような形で指導を施し、テイクを重ねていきます。全体的に大胆なアドリブ演技が目立ち、リラックスムードの中で演技してほしいという、谷口監督の注文は伝わっていたのではないでしょうか。



▶谷口監督「芝居とは・・・」      


一方で、なかなか感情を表に出せない演者の方も。すると谷口監督はこんな風にアドバイスを送りました。


「芝居とは人前でパンツを脱ぐことだからね」



そのユーモラスな表現に、一瞬会場は沸きましたが、それは谷口監督にとっての演技の本質ではなかったのでしょうか?人前で喜怒哀楽をむきだしにし、ときには涙を流したり、醜態を晒したりすることも厭わない・・・それが演じるということ。表現するということ。「恥ずかしい」と思う気持ちを抱えていては、演技の邪魔になってしまいます。感情を露わにしたその先に広がっていく演技の世界、そこに辿り着くための心構えを、谷口監督は独自の言い回しで伝えたのでした。





実技の順番は続いてゆき、なかには演じているうちに感情が昂まってしまったり、他人の演技に感動したりして、涙する方も。それくらい、深く重い場面。そして、真摯に取り組んだ受講生たち。良くも悪くも若いパワーが弾けていた前半クラスとは対照的に、渋みのあるいぶし銀の演技が連発されていきました。



▶会場の涙を誘った「兄妹」ペア      


しかし圧巻だったのは、「仲良し兄妹」を演じた受講生ペア。


明るく快活な「お兄ちゃん」と、病弱で大人しい「妹」のコントラスト、その掛け合いの絶妙さ。言葉が詰まり、呂律が回らなくなりながらもなんとか妹に病気のことを隠そうとする「お兄ちゃん」の必死さが、会場の空気を一変させました。





正直、テクニックでは他の受講生に負けていたかもしれません。台詞や段取りが飛び、声はうわずっていました。しかし、この日一番印象に残った演技はと問われれば、間違いなくこの「兄妹」ペアだったでしょう。


「いやあ、よかったねえ。うるっときちゃったよ」と、谷口監督の目にも涙。受講生やスタッフからは大きな拍手が起こったのでした。


最後は、前半クラス同様、全ペアがカメラを置いて1テイクずつ演技。その映像は2日目の授業の最初に、受講生全員で確認することになります。





ここで「おや?」と思うことがあったのですが、それは2日目のレポートでお伝えします。



▶プランやテクニックよりも大切なもの      


「演技にプランは大切だけど、そこにこだわりすぎず、演じはじめたら流れを重視してほしい」



そう監督から締めの言葉があり、後半クラスの初日は終了となりました。


良い演技とは何なのでしょう?


定められた台詞や動きを完璧にこなすことでしょうか?


確かにそうなのかもしれません。しかし、それだけではない。テクニックとは違う部分での演技の素晴らしさ。それが垣間見えたのが、1日目の後半クラスでした。そして、谷口監督がこのワークショップで伝えようとしているのはそういうことだったのかもしれません。





さて、前半・後半ぶっつづけで怒涛の1日目を終え、2日目で受講生たちにどのような変化がもたらされたのか?引き続きレポートしていきますのでご期待ください!






_is


★「後半クラス2日目」へつづく!

カテゴリー: ワークショップ, 日記   パーマリンク

コメントは受け付けていません。